前回、つぎの更新は書体についてとお知らせしましたが、その前に、8月23日に恵比寿のamuで行われた公開イベントについて、2度にわけてレポートします。

微差こそ大事

8月23日のプレゼンターは、「美女観照」のTomoko Noharaさんと私。私は「日本語ベタ組み解体新書 9種類の組み分け」と題して、このブログでも何度となく触れている向井裕一さんの『日本語組版の考え方』から、主に文章で構成される書籍をベタで組むときに考えられる9種類の組み分けを実演し、その差について紹介しました。

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「あれ? 何が違っているの?」そう思われる方がほとんどかもしれません。行頭と行末に注目して、もう一度よく見てみてください。わずかですが明らかな違いがあります。

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ちょっと見ただけでは気づかない、本当に微妙な差です。けれど、想像してみてください。これが100ページ以上、ときには300ページもつらなったら、と。微差の集積は、決定的な印象の差につながります。

新聞、学術思想、読みもの

私は日本語組版はベタ組みじゃなきゃ、ダメ、ゼッタイ! とは思っていません。日本語組版の将来について考えるなら、プロポーショナルな組版の実現は待望されるものですし、そのための努力も必要だと思います。

そのためにも、まずは基本となるベタ組みを、なんとなくではなくきちんと理解し、状況に応じて使い分けることが大切だと考えています。あくまでもひとつの手段。

そこで、ここに掲げた9種類に、その特徴を示すわかりやすい名前をつけてみようと思います。

9種類と言っても、大きくわければ4種類。それは図に示したA〜Dの通りです。

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これは新聞に見られる組み方。段落先頭や行頭のカッコの扱いが特徴的です。A-1はぶら下がりを禁止していてちょっとストリクトなので「大手新聞系」、A-2はぶら下がりを許容している分ゆるい感じなので「地方紙系」としましょうか。ちなみに、名称はあくまで個人的なイメージです。

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これは段落の先頭と行末がビシッとそろう組み方です。ハードでソリッド。あまり見ない組み方かもしれませんが、学術的な論考など、専門書に見られる組み方です。たしかに、この組み方だと雰囲気が出るのではないでしょうか。ということで「学術思想系」としましょう。

B-1はぶら下がりなしでちょっと頭のカタイ「保守」、B-2はぶら下がり許容の「リベラル」、B-3はぶら下がりを強制するもっとも厳密かつ厳格な組み方なので「原理主義」。繰り返しますが、名称はあくまで個人的なイメージです。

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段落先頭のカッコの扱いに差はありますが、CとDは大きくは同じです。おそらく、現在の日本語書籍でもっとも多く採用されているのがこの組み方(とくにD)です。手元にある文庫本や小説、エッセイを見てみてください。どうですか?

この組み方は行末のカッコ類/約物の扱いが柔軟な反面、AやBに比べ版面の天と地のラインを揃えようとする強制力は弱い。つまり、全体にゆるやかな印象を演出します。肩肘張らずに文章を楽しむ、「読みもの系」と呼ぶのがふさわしいと言えます。

それでもいささか厳密さの残るC-1とD-1は「ビジネス系」、もっともゆるやかなD-1とD-2は「文芸系」でしょうか。

名称はあれですが、こうやって見てみると組み方ひとつで随分印象が違ってきます。ベタ組みのシステムを理解することで、その文章にふさわしい組み方を使い分けることができるようになります。本をこういう視点で見てみると、また違った風景が立ち上るのではないでしょうか。

(つづく)