今回は、8月23日に恵比寿のamuで行われた公開イベントレポートの後編です。前編はこちら

デバイスのこと、ウェブのこと

日本語ベタ組み9種類の組み分けの発表後、参加者とディスカッションをするなかで、おおきくふたつの問題が出てきました。ひとつはユーザが組版の要素を設定できる電子書籍の現状について。もうひとつはウェブについてです。

たとえばKindleでもiPadでも、いわゆる電子書籍の世界では書体、文字サイズ、行間などは、ユーザーが自由に設定可能です。つまり「組む」という行為が無効になります。

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試しにiPhoneでBCCKSリーダーを表示させてみます。ユーザーは文字サイズだけでなく、背景色も自由に設定可能となっています。文字サイズを変えればそれにともなってレイアウトも自動で変更されます。

とはいえ、それで組版そのものの意義がなくなるわけではありません。やはり禁則などのルールはあってしかるべきですし、ユーザーガイドとしての「スタンダードな組み方」は示された方がよいのではないでしょうか。例えば今回の発表で行ったように、ベタ組みの組み分けに名前をつければ文章とのマッチングがしやすくなります。このあたりにも、日本語ベタ組みの可能性があるように思います。

ふたつめのウェブについてですが、これは現在もっとも難しい問題と言えるかもしれません。

ウェブでは、文字をどの書体で表示させるかはブラウザに依存します。いくらデザイナーがフォント部分の設定をしても、ブラウザによってはそれがリセットされてしまったり、そもそもユーザーがそのフォントをPCのなかにもっていなければ、異なる書体で表示されてしまいます。

その点、ウェブ上から自動的に書体を読み込ませることのできるウェブフォントの登場は画期的でした。

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これはフィルムアート社のウェブサイトです。ウェブフォントを使っているため、左からChrome、Firefox、Safariと異なるブラウザで表示させても、表示が崩れません。

しかし、日本語フォントは欧文フォントに比べてデータサイズが大きく、開発にも時間がかかるため、まだまだ選択肢は少ない状況と言えます。

また、ウェブもユーザーによって文字の表示サイズが変更可能ですし、欧文基準の領域であるため、日本語禁則についても紙媒体以上に統一的なルールがない状態。さらにタブレットやスマートフォンでの閲覧にも対応するとなると......それらすべての環境において高い水準を確保することは、とても困難に思います。

「読みやすさ」の集合知

このプロジェクトは、「読みやすさ」という言語化の難しいものを、まず日本語組版という側面から考えてみるものです。言ってみれば非常に限定的なところからスタートしています。それは、そうしないと「読みやすさ」について語ることが困難だから。

ですが、ここでウェブや電子書籍のことが出てきました。それを異分野のこととして顔を背けるのではなく、相互に参照して、日本語組版を考え直すためのヒントにできればと思います。

私は門外漢なので、それを知っている人、現場の人に、話を訊いてみる必要があります。そうした過程も含めて「読みやすさ」という集合知が形成されるのかもしれません。

今後、これまで書いてきた「たのしい組版のために」の一連の記事は引き続き更新しつつ、平行してこうした側面についてもレポートをしていくことになりそうです。